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Honor [Books]

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Honor Killing-家族の名誉のための殺人。

他宗教または他カーストの人物と結婚もしくは真剣に交際している娘そしてその相手を殺害するという事件は昔話ではなく、実際にカナダでも発生している。宗教、文化の違いはニュースで伝えられている内容よりも深く深刻であり、その地域に暮らす人々にとっては出口の無い世界。

インド生まれのSmitaは14歳の時に家族と共にアメリカに渡り、ジャーナリストとして活躍中。インドで事故に遭った同僚に呼ばれ移民後始めてインドに戻る。実際は看病よりも彼女の取材を引き継ぐことになり、若き未亡人Meenaに会いに行く。
ヒンドゥー教徒Meenaはムスリム教徒Abdulと結婚。宗教を超えた結婚は許されない村に住むMeenaは村の長老からの指示に従った実の兄に家を焼かれAbdulは焼死、彼女は瀕死の状況で命を免れる。Meenaは実の兄を法廷で訴える事を決意する。
自身の過去、そして20年後も変わらぬインドの風習に複雑な思いで取材を続けるSmita。
文化、宗教、呪縛、犠牲は超えられないものなのか。

アメリカに移民したインド家族の物語はいくつか読みましたが、多くはヒンドゥー教徒。
宗教を超える結婚に関するタブーに触れるものは少なかったかと。
男尊女卑の世界Meenaの住む村は女性達は男性に尽くすもの。ただそれだけの存在。高学歴や職業は必要とされず、適齢になったら村の長老も関与して見合い結婚する人生。
そこに宗教の違いが重なると恐ろしい効果を醸し出す。ムンバイ等の大都市では多宗教の人々が共存して暮らしているが、郊外は別世界。他宗教は排除すべきであり、境界を超えることは決してあり得ない。そのタブーを犯してしまったMeena。愛があるから、と簡単に考えていたのは悲しいながら知識不足だったに違いない。

Smitaの家族も宗教の違いでインドを追われた過去があり、ジャーナリストとして客観的立場を保つことが難しくなってくる。インドとは母国なのか、憎むべき場所になったのか、と日々問いかけてくる在ムンバイのMohanが彼女の心を癒していく。

小説は殆ど読まないけれど、久しぶりにハマってしまったこの作品、気が付くと読み終えたのは午前1時でした。
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コメント 2

ラパン

宗教や慣習の違いが引き起こす殺人が、それほどあるとは!
私もトルコ人作家の本を読むと、その感覚の違いや東欧のイスラムの世界に沢山のことを学びます。基本的に人間が考えることは同じで宗教の語ることも基本は同じことを語っているのに、違いや不平を見つけて戦ってしまう。人間って責めることや戦争をやめられないのかな、とふと思います。
止まらなくなった本、これだったのですね!
by ラパン (2022-03-26 17:56) 

cecileyvr

ラパンさん
宗教、文化の違いを学んだとしても、実際にその世界に生きるのとは全く別の次元だと思います。インド出身のダーリンと暮らして少々は垣間見たつもりだったけれど一言では決して語ることができませんね。
戦争は征服の欲求のよう。ほんの数名の最高責任者のエゴが発端になるとは本当に恐ろしい世界。
by cecileyvr (2022-03-28 12:36) 

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